歌で人の心の機微を描き出し、ほろりと泣かせたかと思えば、軽妙なトークで笑いの渦に巻き込む。歌もトークも、ネタはいつまでも尽きない。そんなシンガー・ソングライター、さだまさしさんにとって、大切な「みっつ」を聞いた。
さだまさしさんの「みっつ」
①ギター ②つば九郎 ③山本健吉
《中学2年から弾き始めたギターは、さださんの音楽に不可欠な相棒だ》
ギターってね、歌を連れてくるんですよ。どのギターもそれぞれに。だから、新しいギターとの出会いは楽しい。もう数十本ものギターと出会ったと思います。
でも、ライブで使えるのは大体5、6本。ステージではとにかくパワーのあるギターが必要です。
僕は、ギターの中にマイクを直接つけることはほとんどないんです。音がどうしても平坦(へいたん)になって、表情がつきにくいから。一番違うのは、ギャーンとたたいた時の音ね。太い弦を張ったギターをたたいた時の、その奥の深い「鳴り」まで伝えたい。その深みを普通のマイクで拾うためには、バンドの中に埋もれないように、よく音が出る楽器じゃないと。ですから僕の楽器は、頑張って音を出すものが多いんですね。
《長年愛用するのは、1970年代に制作されたYAMAHAの特注ギター。「さだまさしカスタム」と呼ばれる》
ネックが反らないように、背中に黒檀(こくたん)を2本通したんです。その分、ずっしりと重たい。でもいまだにステージで頑張っていますし、これで作った曲が圧倒的に多いと思います。ギターは、ステージでたたけばたたくほど成長する。傷みもするけれど、よく鳴るようになります。
レコーディングには、通称「Tree of Life」というマーティンのギターを使ってきました。93年に50本だけ作られたうちの1本。僕は94年にニューヨークで買いました。本当に良いギターでね、鈴がチーンと鳴るような音が遠くで聞こえるんですよ。パワーがないからライブでは使いませんでしたが、これでずっとアルバムを作ってきました。
それから30年たった昨年、マーティンが今度は「Tree of Life Premium」というのを作ったと言うんですよ。スタッフが借りてきてくれて、弾いてみたら、前のよりパワーがあって。細かい欠点はなくはないですが、美しい高音が見事に出る。試しにデモテープをこのギターでとらせてもらったら、それがそのまま採用になったという。そんな経緯があって購入を決意しました。実に良い出会いでした。新しいアルバムに影響を与えてくれました。
《新譜のタイトルはすぐに決まった。「生命の樹~Tree of Life~」(5月14日発売)。収録された新曲7曲のうちの一つ「Tomorrow」では、ある大切な友への思いがつづられている》
「つば九郎」と最後にメール…