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 少子高齢化に2度の地震が襲い、さみしくなった能登半島の集落に、小さなスーパーマーケットをつくろうと、地元の住民が募金活動を始めた。集える場所を設け、にぎわいを少しでも取り戻したいとの願いからだ。

 石川県輪島市門前町の道下(とうげ)地区は、市中心部から南西に約20キロ離れた農村集落。2007年に続き、昨年1月の能登半島地震でも大きな被害を受け、地区内ではいま、住宅に約100世帯、三つある仮設住宅団地に計約350世帯が暮らす。

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とうげマルシェの建設予定地前で談笑する餅山央さん(右)と柴田寿美香さん=2025年7月24日、石川県輪島市、千種辰弥撮影

 「聞こえるのは小鳥のさえずり以外、壊れた家を解体する重機の音くらい」。地区内にある実家の医院で働く精神科医の餅山央(てる)さん(61)は、人通りの乏しい地区の様子を、こう語る。

 中学2年で実家を出て、東京や金沢で働き、3年前、子どもが手を離れたのを機に戻ってきた。中学生のころは金物屋や酒屋があり地区内で買い物が済んだが、戻ってみると2軒あったスーパーもなくなっていた。

 昨年1月の地震後、すぐに医院を再開し、被災者の声に耳を傾けた。食事づくりから掃除まで自宅で身の回りのことを自分でしていたお年寄りたちの中には、避難所で何もせず過ごすうちに足腰が弱り、認知症の症状が出ている人もいた。

 健康のためには歩くことが大…

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