コーヒーからの悲しい卒業を減らしたい――。そんな願いが込められた、独自開発の「とろみコーヒー」をコメダ珈琲(コーヒー)店を運営するコメダ(名古屋市)が一部の店舗で提供を始めた。高齢化が進み、飲み込む力が弱くなる人が年々増えるなか、ゆっくり、安心して楽しめる一杯をめざしたという。
商品名は「とろみコーヒー」。スプーンですくって口に含むとまろやかに舌をくるみ、コーヒーのコクと苦みがゆっくりと広がる。時間をかけて飲んでも冷めにくい特徴もある。
開発のきっかけは2020年、同社マーケティング本部の伊藤弥生本部長が介護職の友人から、ある相談を受けたことがきっかけだった。
「コーヒーにとろみをつけると、おいしくなくなっちゃうんだよね」
加齢や病気などの影響で、ものをかんだり飲み込んだりする力が弱まると、さらさらとした液体はむせやすく、誤嚥(ごえん)につながりやすい。こうした「嚥下(えんげ)障害」のある人は国内で100万人を超えるとの推計もある。飲み込む際にむせることが増え、好きだったコーヒーを飲むのが怖くなってしまう人もいると聞いた。
「コーヒーからの悲しい『卒業』を減らせれば」。伊藤さんはさっそく開発に乗り出した。
1日に3度通ったファンも喜び
すぐに難題にぶつかった。
市販のとろみ剤を使ってコー…