外国人に対する反発や反感が、うっすらと日本社会を覆っている。排外主義をあおるかのような主張も目立ち始めた。だが、実際の外国人の暮らしや、すでに彼らと共にある日本のリアルを、私たちはどこまで知っているのだろうか。国境を越えた人口移動を専門とする国立社会保障・人口問題研究所国際関係部長の是川夕さんに聞いた。
限られた事例が目立つことで…
――参院選では、外国人への規制強化を訴える政党が支持を伸ばしました。日本に住む外国人たちへの負の感情が、少しずつ広がっているようです。
「限られた外国人の事例が目立つことで、全体の姿がゆがんで見えているのが現実だと思います。例えば技能実習生の失踪、民泊業者によるトラブル、外国免許切り替えで車を運転した人の事故などのイメージが実態以上に広まっている。これはメディアやSNSの問題でもあります」
「私の調査では、外国人の多くは日本社会に溶け込み、日本人とほぼ同様の生活を送っています。しかし、その大きな部分が見えにくい。集合を表すベン図で説明すると、生活実態の大枠は日本人と重なっていて、外国出身であることに由来する部分はごくわずかに過ぎません。もちろん違法行為や迷惑行為の事例もありますが、それは日本人と同様、個人レベルの問題です」
「外国人増で治安悪化」は本当か?
――多くの人の抱くイメージが、リアルな外国人の姿とずれている、と?
「外国人の増加で治安悪化を…