バリアーをなくすのは誰か⑤ 吃音外来医師・菊池良和さん
「吃音(きつおん)ドクター」として、九州大学病院で吃音の人向けの外来を開く菊池良和さんは自身も吃音があり、さまざまな悩みと向き合ってきました。バイデン米大統領が自身に吃音があることを明らかにするなど、吃音を公にする著名人も出てきています。菊池さんは、周囲の受け止め方が、当事者の困難に影響することも知ってほしいと言います。コミュニケーションやかかわり方を変えるにはどうすればいいか、聞きました。
――そもそも、吃音とはどのようなものでしょうか。
一言でいえば、話す時に「タイミングが合わない」ということです。発話しようとする意志と言葉を発する行為のタイミングが合わずに、言葉につまったり、話すのに時間がかかったりします。例えば、歌っている時は吃音が出にくいと言われます。自分のタイミングではなく、歌のリズムに合わせると大丈夫だという人もいます。誰かと2人で音読することをすすめることもあります。誰かのタイミングに合わせることで話しやすくなります。
――吃音が出ないように話し方を工夫することもありますか。
たとえば、私は自分の「菊池」という名前の「き」を言うのが難しいです。ただ、「私の名前は菊池です」と、最初の言葉を変えると言いやすくなります。吃音の人はそれぞれ、話し方を工夫して、吃音を出さないようにしてしゃべっています。でも、それによって、吃音があっても普通に生活できている、と困難を過小評価されている面もあるのですが。
――吃音のある人に対する周囲の反応はどのようものでしょうか。
話し手に吃音がある時、聞き手はつい話の途中で補足しようとしたり、「ゆっくり」「落ち着いて」といったアドバイスをしたりしがちです。話し終わった後に笑われたり、まねされたりすることも、吃音のある人にとっては嫌なものです。吃音を笑うのは子どもだけではありません。大人は気まずさを隠そうと愛想笑いを浮かべることがありますが、笑われていると感じて傷つく人もいます。逆に、おもしろいと思うことを言っても、吃音の人を笑ってはいけないと思われるからか「シーン」と無反応になるような時は悲しくなります。
――気をつかっているようで、逆に傷つけてしまうことがありそうですが、のぞましい会話とは。
誤解されがちな当事者
吃音のある話し手が話し終わ…