たんぱく質などが活発に動いているところを分子レベルでリアルタイムに観察できる日本発の顕微鏡がある。金沢大の安藤敏夫特任教授(生物物理学)らがつくった高速原子間力顕微鏡(高速AFM)だ。

【動画】高速原子間力顕微鏡で明らかになったたんぱく質やDNAの変化=金沢大・名古屋大提供

 原子間力顕微鏡(AFM)は、1986年に欧州で開発された。細い針のついた板状のバネ(カンチレバー)で試料をなぞると、針先が「原子間力」というわずかな力を受ける。この変化をレーザーで捉えることで、試料の形がわかる。

 液体中の分子も観察することができるが、撮影には分単位の時間がかかり、動画にはできないという欠点があった。安藤さんは「速くできれば、生体分子が生きて活動しているところが見えるだろう」と思い立ち、高速化を決意。93年から開発を始めた。

原子間力顕微鏡の仕組みのイメージ

 企業の力を借りて微小なカンチレバーをつくったほか、試料を置く台を3次元に動かす高速スキャナー、その振動を抑制する技術、レバーの動きを高速かつ高感度に検出するセンサーを試行錯誤しながら独自に開発。2001年には試作品ができた。

 撮影した結果は、「高速AFMなんて無理だろう」と思っていた多くの関連する研究者らを一様に驚かせたという。

開発した高速AFMについて説明する金沢大の安藤敏夫特任教授=2025年7月31日、金沢市、鈴木智之撮影

 周囲からの期待が日増しに高まる中、試料がすぐに壊れてしまうという課題が残っていた。安藤さんらは焦りながらも、針を優しく接触させるため、制御の改善などを続けた。そして08年、従来のAFMの1千倍の速さで撮影できる高速AFMを完成させた。

 高速AFMを国内外で有名に…

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