「安心」の値段~身寄りなき老後~ イラスト・廣戸美香

 いまから12年ほど前のことだ。

 どうすれば、「老後の安心」を手に入れることができるのか。関西地方に住む女性(77)は、不安に駆られていた。

 夫(77)とは会社で知り合った。30代後半で結婚し、女性は退職した。子どもはいない。

 休みがあれば国内を旅行した。ぜいたくはしなかったが、「将来」を意識して備えることもなかった。

 でも、夫が65歳で定年退職してからというもの、「どちらかが倒れたら、どうしたらいいんやろう」。互いの老後への漠然とした不安が膨らんでいた。

 特に心配だったのは、女性が先に倒れた場合だ。

 女性は25年ほど前に甲状腺がんになり、その後も定期的な通院が続いていた。夫は仕事一本で生きてきて、家のことはほぼ女性が担ってきた。

 お互いのきょうだいは、あわせて4人。親が亡くなってからやり取りはなくなり、もう長い間会っていない。

 もしものときに保証人などを頼むのは無理だ、と思った。

 付き合いのある友人たちも、少し離れたところに住んでいて、身体の具合を崩していたり、親の介護で忙しそうだったり。何かあったときに頼むのは難しいと感じていた。

 頼れる先が必要だと思った。

  • 【そもそも解説】「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」とは?

 図書館で「おひとりさま」に関する本を読み、「身元保証事業者」という存在を知った。入院や施設入所時の身元保証のほか、見守り、買い物の手伝いなどの日常生活支援、葬儀や家財の処分といった死後事務も有償で請け負ってくれるのだという。

 「入ろうか?」。夫に聞くと、「うーん……」。気のない返事。「何かあったら、きょうだいに言えるん?」「それは、よう言わん」「ほな、はいらな」。早速資料を請求した。

 近くに事業所があるということで、選んだのが「日本ライフ協会」だった。

手に入れたはずの「老後の安心」

 日本ライフ協会の設立は20…

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