(15日、第107回全国高校野球選手権大阪大会3回戦 大阪桐蔭13―0星翔=五回コールド)
「笑顔で、笑顔でー!」
初回いきなり4失点、二回も7失点。どんなに点を取られても、「元気よく楽しんで、星翔の野球をする」。星翔の東條悠輝(はるき)主将(3年)は伝令でマウンドに駆け寄った時、イニングの合間、仲間に声をかけ続けた。
現チームの3年生20人のうち、10人が下級生時からメンバー入り。試合経験はあったが、昨冬、まとまりを欠いた時期があった。練習に集中できずに、途中で切り上げた日も。だが一人ひとりと本音でぶつかりあった。
3回戦、相手は大阪桐蔭。「どんな展開でも、どんなに点を取られても、最後まで諦めずにいこう」。東條主将は試合前の円陣でそう伝えた。
二回途中からマウンドに上がった。四回途中からは右翼の守備に。そこから見た仲間たちはどんな時も笑顔で、元気に声を出していた。「どんだけ点差があっても何が起こるか分からない」。全員が全員を信じていた。
13点差で迎えた五回表。先頭打者の松生拓真選手(3年)が左中間への安打で出塁。「まだいける」。2死一塁、自分にまわってきた。
「いけ東條ー!」「頼むぞー!」
仲間の声を受け打席へ。「まだまだ、みんなと野球がしたい」。だが三振。最後の打者となった。
試合後、すっきりとした表情で相手の校歌をきいた。「もうこれで野球がおわるんやな」。共に戦った、昨秋や今春の大会。夏にめがけて追い込んだ練習。様々な思い出がよみがえった。
「このメンバーは宝物で、感謝しかない。みんなのことを思うと、ぐっときちゃうんで」。涙をこらえ、笑った。