2019年6月29日、大阪で開かれた主要20カ国・地域首脳会議(G20サミット)に合わせて会談した米国のトランプ大統領(左、当時)と中国の習近平国家主席=ロイター

 中国の王毅(ワンイー)外相は14日、「米国が中国を押さえつけるなら、中国も最後まで付き合うしかない」と語りました。日本国際問題研究所が昨年末に発表した「戦略アウトルック2025」で、中国で習近平(シーチンピン)国家主席の個人支配体制が定着していると分析した李昊(りこう)東京大学大学院准教授は「中国は対米外交に集中するため、全方位的に関係改善を目指している」と語ります。同時に、石破茂首相の対中外交について「リアリストとして対中リスクを減らす努力が重要」とも指摘しました。

 ――中国では習近平氏に対する個人崇拝が強まっているとたびたび指摘されています。

 2012年の中国共産党大会で初めて総書記に就任してから、少しずつ習氏に対する個人崇拝が強められてきました。17年の党大会では習氏の名前を冠した「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」と題したイデオロギーが党規約に盛り込まれ、同大会が閉幕した直後の人民日報は1面で習氏の写真をひときわ大きく掲載しました。

 その後は、習氏の実績や能力をたたえる宣伝があからさまに増え、2022年ごろから、習氏を「人民の領袖(りょうしゅう)」と呼ぶ宣伝キャンペーンも展開されています。この尊称もいつか公式化されるかもしれません。

 こうした動きは、本人が拒絶すれば止まるわけですから、習氏自身の意思であることは間違いありません。周囲の忖度(そんたく)という面もあると思います。

 ――なぜ、強固な支配体制が確立できたのでしょうか。

 12年当時は、胡錦濤(フーチンタオ)時代への反省から、「もう少し、リーダーシップを発揮できる体制にすべきだ」というコンセンサスが指導部内にあったようです。

 習氏はこの流れに乗り、反腐敗の名目で政敵を次々に排除しました。そのうえで、総書記への書面での職務報告の義務化や、自らがトップに就いた「中央全面深化改革領導小組」の創設など、制度面でも権力集中を進めました。

 また、習氏はかつて勤務した福建、浙江、上海時代の部下を次々に抜擢(ばってき)し、周りを固めています。現在、習氏以外に23人が選出されている共産党政治局員はいずれも、習氏に忠誠を誓ったとみられる人物であり、対抗勢力は見当たりません。

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「反腐敗キャンペーンは政治運動」

 ――アウトルックでは「秦剛…

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