「世界でいまだに『戦後』が続いているのは日本だけ」。それはなぜなのか。人類史的な転換に立ち会っているという私たちは、この先の「戦後100年」に向けて、どう生きるべきなのか。現在も精力的に世界各国の「戦争の記憶」について比較研究を続ける歴史学、アジア研究の世界的権威の米コロンビア大学教授、キャロル・グラックさんに聞きました。
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いまも1945年からという長い「戦後」が続いているのは日本だけでしょう。
もちろん、多くの国が「今年は戦争終結80年」を記念するでしょうが、「敗戦」でも「終戦」でもなく、「戦後80年」と表現するのが日本の特徴でしょう。日本以外の多くの国では、戦後は何十年も前の1950年代に終わっています。
1956年度の経済白書が「もはや『戦後』ではない」と述べ、80年代に中曽根康弘首相による「戦後政治の総決算」、21世紀に入ってから安倍晋三首相の「戦後レジームからの脱却」に至るまで、「戦後の終わり」が繰り返し強調されましたが、「戦後」はまだ続いています。
なぜ21世紀の第2四半期に入ろうとしても、日本人は現在を「戦後日本」と呼び続けるのでしょう?
戦争の記憶と「戦後」という響き
なによりも日本国民が「戦後…