朝もやのなか、津波の被害を受けた石川県珠洲市の宝立地区を歩く学生ら。想像を超える光景に言葉少なだったという=兵庫県芦屋市提供

 「語り継ぐ」と人は言うけれど、それって何のため?誰のため?30年前の災禍を知らない若者たちが自問し、「伝えたいこと」にたどり着いた。

 9月15日朝、甲南女子大学(神戸市東灘区)の学生7人は石川県珠洲市の宝立(ほうりゅう)地区にいた。海沿いの小さなまちは、元日の能登半島地震で4メートルを超える津波に襲われた。

 斜めになぎ倒された家々は、多くがそのまま。周りには割れた茶わんや化粧品、片方だけの靴。

 3年生の中川咲希さん(21)は小さなポケモンのぬいぐるみを見つけた。持ち主は無事だったのだろうか。海から吹き付ける風の音以外は何も聞こえない。でも、そこには確かに人々の暮らしがあったと感じた。

 目の前の光景と、両親から聞いた阪神・淡路大震災の話がつながった気がした。

 珠洲市の仮設住宅では、ハンドトリートメントを施しながら被災者の声に耳を傾けた。故郷への思い、明日への不安。見ず知らずの自分たちに打ち明けてくれた思い。託された、とも感じた。

 「能登の人たちの思いを多くの人に伝え、つながりたい。つながるとは、共に学び合うこと」

 阪神・淡路大震災から30年に向けて、学生たちは兵庫県芦屋市が企画した特別番組づくりに参加している。共同制作を持ちかけられた甲南女子大が参加者を募り、中川さんら9人が手を挙げた。

 最初から震災に関心があった学生ばかりではない。「学生生活の思い出になれば、みたいな軽い気持ちで参加しました」。2年生の中上朱莉さん(21)はこう明かした。

 そんな中上さんの心を大きく揺さぶる出会いがあった。

 7月下旬、学生たちは芦屋市…

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