藤井聡太名人が永瀬拓矢九段を下した第83期将棋名人戦七番勝負は、どんなシリーズだったのか。第5局で立会人を務めた藤井猛九段(54)に聞いた。
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ここまで後手番が定跡形の角換わりを避けていましたが、第5局は藤井名人が普通に受けて立ちました。右玉も角換わり定跡の一つ。先手十分、後手がどこかで工夫をしないといけない角換わりの中で、藤井名人が新しい手を追求しにいきました。△5一金(千日手局の42手目)があまり見かけない手。新しい手待ちの方法として用意してきたのでしょう。
そして千日手。指し直し局は辛抱する局面が続きましたが、風が吹いてからはさすがの正確な指し回しでした。優勢だった永瀬九段はもっと早く勝ちを決めにいけば良かったようです。
第1、2局は難解な将棋でしたが、第3局は永瀬九段にとって出来が悪かった。その分、第4局は頑張って力を出した印象です。永瀬九段らしさが出ました。
今シリーズは千日手をめぐる駆け引きが多かった。私も(竜王3連覇の)2000年ごろ、後手番では積極的に千日手を狙いました。それまでは「千日手を狙うのは消極的」という雰囲気でしたが、後手番の立派な戦術だと思っています。打開しないといけないのは先手番。千日手を簡単に受け入れているようではダメなんです。
第4局は藤井名人が先手番で…