8月の「青森ねぶた祭」に向けた準備が山場に入った5月半ば、ねぶたを作る作業小屋のあかりは深夜まで消えなかった。骨組みとなる針金の調整作業が進む現場に4年前、青森市に移住した鶴宮一輝さん(31)がいた。

 東京の大手金融機関を27歳で辞め、「ねぶたに人生をかける」と決断した。

ねぶたを作る鶴宮一輝さん=2025年5月17日午後7時53分、青森市、遠藤和希撮影

 出身は東京だが、幼少の頃から家族の転勤で東北を転々とした。中学からは横浜市に移り住んだが、大学は愛着のある東北大学に進んだ。

 就職後は法人営業や業務改革のための大規模プロジェクトに関わり、国内各地を回った。仕事の充実感は十分だった。だが、入社6年目にふと幼少時の強烈な思い出が脳裏に浮かんだ。

 躍動感と迫力あるねぶたの壮観な美しさ。初めて見たねぶたに心を奪われ、毎年のようにねぶた祭に通った。大学の卒業論文でもテーマに取り上げ、時代に合わせて変化し、発展してきたねぶた祭を民俗学の観点から考察した。

夜になるとねぶた小屋に明かりがともされ、祭りに向けた準備が進められていた=2025年5月17日午後8時45分、青森市、遠藤和希撮影

 会社員として経験を重ねるほどに、「ねぶた以上に魅力的なものはない」との思いは強まった。「これからの人生をどう歩むべきか。決断をしないとチャンスを失うのではないか」。退職と青森への移住を決断した。

移住後に探ったねぶたへの足がかり

 青森でも仕事を続けられるよ…

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