ひきこもり状態にある人が全国に146万人いるとされるなか、自治体による支援に関するあらたな指針を国がつくった。テーマは「自立から自律へ」。各地に相談窓口はあるものの、当事者や家族が途中で相談をやめてしまうケースが後を絶たないからだ。
福祉窓口で「本人連れてきて」 しだいに足が遠のいて
関東地方に暮らす80代と70代の夫婦の息子が、部屋から出なくなったのは16年前のことだった。
小学生のころから不登校を繰り返しており、当時は20代。夫婦はどうしていいかわからず、役所や保健所に何度も足を運んだ。
福祉窓口で「本人を連れてきてください」と言われ、言葉を失った。「それができないから相談にきているのに」。的外れな応答の繰り返しに、しだいに役所から足が遠のいていった。
頼った先は「自立のプロ」 連れ出された息子
そんなときだった。心配した親族から民間業者を教えてもらった。「自立のプロにお任せください」「半年以内の就職率96%」。わらにもすがる思いで相談に行くと、業者から契約を迫られた。東京都内の施設に息子を預けることになり、1年分の費用として1千万円を支払った。
入所の当日、息子は7~8人の男に部屋から連れ出された。施設での様子については、業者から「報告書」が届いた。授業を受けたり、ほかの入所者と交わったりしているとあり、「回復に向かっている」と胸をなで下ろした。契約終了間際、「息子さんの場合はあと1年は必要」と言われ、借金をして追加の1千万円を支払った。
施設から戻って5年 息子はいま
その2カ月後、業者から突然…