現場へ! 巣立ちを支える(5)
診療所の待合室の入り口の壁に、色とりどりの小さなカードがたくさん貼られている。治療をがんばった「せんぱい」からのメッセージだ。
「こころの箱を整理したらスッキリした」「すっきりするよ」
診療所は2013年、「子どもの回復支援」を掲げ、西日本のある児童相談所の中にできた。児童精神科医と担当の児童心理司がいて、児童養護施設などで暮らす子どもたちの虐待などによる心身への影響を評価し、医師の判断で、必要な子にはトラウマに焦点を当てた専門的な認知行動療法にも取り組む。
まず、子どもが治療に意欲を持てるよう、心を箱に例えて説明する。「今はおうちであった怖いことの記憶や気持ち、考えてたことなんかがギュウギュウに詰まっているんだよね。あふれ出てくるのも怖いから、必死でギューッとふたをしてがんばってきたんだね。でも、ふたをし続けていたら、怖い記憶は消えるかな? ギュウギュウになっているものを、一緒に一つひとつ出して、お片付けしたら、箱からあふれてこなくなるから、ふたをするのにギューッと力を使わなくてすむよ。その分、勉強したり、遊んだりすることに力を使えるよ」
そして、片付けの準備ができたか、子どもに確かめながら進めていく。
8割に何らかの治療が必要
11年、この児相を含む三つの自治体の各児相に付設された一時保護所に、同年6月の1カ月の間に保護され、医師が診察できた6歳以上の子ども62人について調べると、8割に何らかの治療が必要だった。
西日本のこの児相では、共通…