「長野の魅力に取り憑(つ)かれた兄妹」としてインスタグラムを妹と運営する。アカウント名は「ナガノノ」。「長野県激混みスポット8選」「軽井沢激推しスポット8選」といったお役立ち情報が人気だ。フォロワーは約9万人にのぼる。
永井心(じん)さん(24)は長野市で育ち、大学で東京へ出て郷里の魅力に目覚めた。SNSのアカウント運営に関心があり、在学中からキャンパス情報の配信でフォロワーを得た。マーケティング会社のインターンとしてビジネス術も磨いた。
卒業を控え、決断を迫られた。マーケティング会社に就職するか、地域情報を配信しながら生計を立てるか。後者に決めた。「ナガノノ」を立ち上げ、35日間でフォロワー1万人をつかんだ。
やがて同じモデルが全国で通用すると気づき、合同会社LocaLinkを仲間と設立。輪は広がり、今では北海道から九州まで約80地域のご当地アカウントとノウハウを共有している。
LocaLinkは「新聞・テレビに続く第3のメディア」を目標とする。既存メディアはライバルか。「テレビや新聞のほうがまだまだたくさんの人々に情報を届けられる。足りないところを補い合えればいい」
abn長野朝日放送の土曜朝の情報番組「駅テレマルシェ」にたびたび出演する。「祖母からすごいねと言われ、テレビの力を感じた」。番組やイベントの告知などで協業をしてきたabn営業部の秋山治毅さん(29)は「よく考えて結果を出す。実力があるのに常に謙虚」と評価する。
4月下旬、長野県の「広報パートナー」に任命された。選ばれたのは21組。インスタグラムやユーチューブで県内おすすめの名所、飲食店などを独自に紹介してきたインフルエンサーたちだ。フォロワー総数は100万人超におよぶ。
県の調査で18歳から20代で県政情報を知るメディアが「特にない」と答えた割合が半数を超えた。Z世代の関心を引くのが得意な彼らに広報を助けてもらうねらいだ。自身は準備段階から携わり、県とほかのインフルエンサーをつなぐ手伝いをした。
「人口は減っても地方の魅力が減るわけではない。地方からいいものをどんどん発信して東京一極集中を変えたい」。その大きな流れはもう起こっている、と確信しているようにみえた。