ふるさと納税の返礼品をたくさんもらうと税金がかかることもある。では、税務申告の際にその価値はどう調べたらいいのか。この点に関する国税当局と納税者の対立が訴訟に発展した。裁判所はどう判断したのか。
原告の女性は、2018年までの2年間に全国の延べ約110自治体に対し、ふるさと納税制度を使って計490件の寄付をした。それぞれについて返礼品を受け取り、その種類は食品や酒類、ホテル宿泊券など多様だった。
こうした返礼品は寄付の対価ではなく、税法上は受け取った人の経済的な利益である「一時所得」とみなされる。特別控除額(50万円)を超えた額の半額が課税対象になる。
この女性は確定申告にあたって給与所得などは申告したが、返礼品から生じる一時所得は含めなかった。
490件で280万円分の返礼品
税務署は女性に申告の修正を求めるのに際し、返礼品の価値について「自治体が調達のために支出した金額」と定義。寄付先の自治体に照会をかけ、返礼品490件の価値は計約280万円が相当と算出した。その上でこの分の所得税額計40万円超を増やす処分を女性に通知した。
女性はこれに不服を申し立てたが、折り合いがつかずに税務当局を提訴。女性が問題としたのは主に返礼品をめぐる税務上の定義だった。
訴訟で女性は、返礼品の価値は「近くの小売価格の最安値かそれに近い金額によって判断するべきだ」と反論。各自治体に調達価格を問い合わせるのは膨大な労力が必要になるとも訴えた。
女性は税務署が算出した返礼品の時価が寄付総額約660万円に対して4割を超えていたことも問題視。総務省が返礼品を寄付額の3割以下にするよう各自治体に求める通知(3割ルール)を出しており、「通知を信頼した利用者に不意打ちとなるものだ」と反発した。
自治体に確認、労力は「当然の負担」
昨年2月の横浜地裁判決は「納税者は各自治体に対し、調達価格を確認するなど適正な時価を把握したうえで申告する必要がある」と指摘。返礼品の価値について税務署の定義を追認する見方を示した。その上で納税者に多大な労力を求めるものであっても「当然の負担とみるべきもの」と結論付けた。
3割ルールについては「税務官庁が納税者に対して公的見解を示したとは認められない」と判断。女性の訴えを退けた。
二審・東京高裁も昨年12月にこの判決を支持し、女性の控訴を棄却。女性はこれを不服として、上告したが今年5月に最高裁に棄却された。
高額所得者でなくても「誰にでも起こりうる事案」
今回の訴訟の原告は総所得が…