堂々と舞った国見小6年の桑原怜之将さん=2024年8月18日午前9時47分、山口県上関町、貞松慎二郎撮影

 祭り取材をライフワークにしている記者として、8年ぶりの伝統行事「神舞(かんまい)」を一目見ようと18日、山口県上関町の祝島へ渡った。ともに過疎化に悩みながら、国東半島(大分県)の端にある神社との間で千年を超す交流が脈々と続いてきた理由を垣間見た気がした。

 今回から会場となった高台の小学校の体育館は、国東からの見物客も加わって、熱気むんむんだった。

 島の人口は269人(8月1日現在)と8年前の412人からぐんと減った。同じように、神楽を継承する伊美別宮社がある国東市国見町も過疎化が進む。7月末現在の人口は3394人で、8年前から約1千人も激減した。

 国東から向かった神楽の舞い手「里楽師(りがくし)」は17人。鬼の面を付けた荒神たちが幼児を抱き上げると泣き出す子も。観客席は笑いに包まれた。

 17人の1人で大阪在住の大学3年生田中統也さん(20)は「神楽がめっちゃ好き。体育館の雰囲気もよくて、すごく気合が入った。4年後も必ず出る」。父の基嗣(もとつぐ)さん(47)=大分市=は8回目の奉仕で、祝島への愛着を「古里に帰省しているよう」と表現した。

 島の大歳神社であった神事では、米占いの結果として「次回の開催は2028年と決まりました」と発表された。祝島神舞奉賛会の木村力(つとむ)会長(77)は「4年後を目指して頑張りたい」。

 出船神事では、島民らが手こぎの櫂(かい)伝馬(でんま)船に乗り込み、神職や里楽師が乗った3隻の御座船を先導。港沖で旋回する様子を島の人々はじっと見守った。まぶしいほどの海を岸壁から見下ろすと、魚の群れが泳いでいた。

 双方の関係者は誰もが、お互いの協力で神舞が奉納できることに「ありがたい」と口をそろえた。感謝を胸に、先祖からの伝統行事を守り抜く心意気。汗だくで舞う姿から、その矜持(きょうじ)がひしひしと伝わってきた。(貞松慎二郎)

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