【ニュートンから】時間心理学(1)

 時間は誰にでも平等にあたえられている。制限時間が1分のゲームをするとき,自分にあたえられた1分と,相手にあたえられた1分は同じだ。しかし,自分はその1分を長く感じ,相手は短く感じるということがある。このように,時計がきざむ時間の長さと,実際に感じる時間の長さは必ずしも一致しない。

 時計によって規則正しくきざまれる客観的な時間は「物理的時間」とよばれる。物理的時間に対して,人間が主観的に感じる時間は「心理的時間」とよばれる。心理的時間は,その人が置かれている状況によってのびちぢみするという特徴がある。

楽しい時間はあっという間にすぎるのに,退屈な時間は長く感じてしまう。時間の感じ方を自分でコントロールすることはできるのだろうか?

子供の1年と大人の1年は なぜちがうのか

 心理的時間でよくいわれるのは,「子供のときの1年は長く感じ,大人になってからの1年は短く感じる」というものだ。その理由として,「年齢を分母として1年の長さを感じるから」と説明されることが多い。たとえば,10歳になった子供にとっての1年は人生の10分の1を占めるが,50歳の1年は50分の1にすぎない。そのため,年をとるほど1年を短く感じるという理屈だ。

 これは,フランスの心理学者ピエール・ジャネ(1859~1947)らが提唱した「心理的時間は年齢に反比例する」という考えにもとづいており,「ジャネの法則」とよばれている。

 しかし,千葉大学で心理学を専門に研究する一川誠教授は,「ジャネの法則は科学的に検証されておらず,現在の心理学者の間ではほとんど支持されていません」と話す。

 別の可能性として考えられて…

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