生後10カ月のハイサム・カリムちゃん。栄養が不足し、あばら骨が浮き出ている=2025年8月20日、パレスチナ自治区ガザ北部ガザ市

 パレスチナ自治区ガザの最大都市である北部ガザ市などで「飢饉(ききん)」が広がっていると確認された。現地で何が起きているのか。

 「息子はいつ死んでしまってもおかしくない」。ガザ市中心部の避難民テントに身を寄せるワラ・カリムさん(29)は、あばら骨が浮き出た長男のハイサムちゃん(10カ月)を抱きかかえながら、朝日新聞の現地スタッフに語った。

 ガザへの攻撃を続けるイスラエルは今年1月、イスラム組織ハマスと停戦で合意。国連世界食糧計画(WFP)によると、停戦期間中は毎日トラック600~700台分の支援物資がガザに搬入されていた。ワラさん一家も「十分な食料を適正価格で手に入れることができた」といい、ハイサムちゃんの体調も良好だったという。

 だが、イスラエルが3月2日に国連やNGOによる支援物資の搬入を停止し、同月18日に攻撃を再開すると、状況は一変した。食料や医薬品の価格は高騰し、入手が困難になった。5月初めごろからハイサムちゃんに下痢や嘔吐(おうと)、発熱といった症状が表れ、病院で重度の栄養失調と診断された。ワラさん自身も栄養不足から母乳の量が減った。1日に数回レンズ豆のスープを飲ませるなどしているが、ハイサムちゃんの体重は3月以降、9キロから6.3キロに減少したという。

 国際社会の批判が高まるなか、イスラエルと米国が支援する「ガザ人道財団」が5月末から、従来の国連機関などの約400カ所での配給に代わり、4カ所で配給を始めた。だが、最寄りの配給所は一家のテントから10キロ近く離れており、受け取りに行くのは難しい。配給所の周辺では援助物資を求めて集まった人々がイスラエル軍などに攻撃される事例も相次いでいる。

「子どもたち全員の将来が脅かされている」

 7月末から欧州や中東などの…

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