つやつやと光沢のあるライスが平皿に載っている。小粒で粘り気が少なく、食感はさっぱりしている。一緒に運ばれてきたチキン入りのカリーソースをかけると輝きが増した。ソースをまとったライスは、絶品だ。
老舗「中村屋」の新宿の2店舗で「純印度式カリー」に使われているこのコメは、江戸時代に幕府に上納され、当時日本一おいしいとも言われた「白目米(しろめまい)」という品種だ。同店では現在、石川県内の農家に栽培を委託しているが、実は埼玉がルーツだという。江戸時代は「武州幸手特産」として、現在の幸手市を中心に栽培されていた。
昭和初期、この白目米に目をつけた人物がいた。同店の創業者、相馬愛蔵氏である。同店によると、1927年に発売されたインドカリーにはもともとはインディカ米が使われていたが、より日本人になじむ味を求めた相馬氏が親戚の米穀研究家から紹介されたという。
日本人が好きなモチモチ感がありながら小粒でぱらっと炊きあがり、カリーソースが均等に染みわたる――。相馬氏は当時の1等米よりも2割も高い値段で買い取ると約束し、幸手や秩父など埼玉県内の農家12軒に契約栽培を依頼した。白目米のインドカリーは、一般的な食堂の10倍ほどの値段だったにもかかわらず飛ぶように売れた、と同店の記録に残っている。
白目米にはしかし、弱点があった。稲の背丈が高く、栽培時に倒れやすい。穂も落ちやすく、手間のわりに収量が少なかったため、質より量が優先された戦時中の食糧政策の中で、次第に姿を消していったという。
消えた「白目米」探しに奔走
時は流れ、平成に入り、白目…