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大哺乳類展3の会場では、約200点の哺乳類の「大行進」を見ることができる=2024年4月19日、東京・上野の国立科学博物館、稲葉有紗撮影
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 哺乳類の進化や多様性の不思議に迫る特別展「大哺乳類展3―わけてつなげて大行進」(朝日新聞社など主催)が東京・上野の国立科学博物館で開かれている。剝製(はくせい)や骨格など約600点の標本が並び、3月16日の開幕から既に10万人が訪れ、人気の展示となっている。

 2010年と19年に続く今回のテーマは自然史研究の基礎となる「分類=わける」と「系統=つなぐ」。6千を超す哺乳類の種が進化を経てどうつながり、どう分かれているのか。見た目や内部の特徴に加え、近年の技術革新で解析が進むDNAの遺伝情報も手がかりに紹介している。

 会場では陸と海の哺乳類約200点が「大行進」する様子が目を引く。パンダやアザラシなどは剝製と全身骨格の両方が展示され、比べて見ることもできる。姿かたちが似ていても全く別の系統で進化した種同士を比較する「見た目にだまされるな!」というコーナーもある。

 ヒトも哺乳類の一種。哺乳類のほとんどは首の骨(頸椎(けいつい))が7個で構成され、キリンもヒトも同じという。福島県から訪れた会社員の芳賀友則さん(64)は「骨の共通性に驚いた。動物と人間って違うものだと思っていたが、つながっているんだ」と目を輝かせた。

 また、看護師の鈴木麻理恵さん(35)は動物とヒトの違いを実際に見たいと訪れた。会場にはクジラの心臓やカバの胃も展示されている。「(人間と比べて)同じところや似ているところもあるけれど、生活の違いによって全く違う」と感想を語った。

 期間は6月16日まで。(砂山風磨、岸めぐみ)

分類の根本的な面白さ「好奇心を満たすこと」

 大哺乳類展3は多彩な展示で訪れた人たちの目を楽しませている。

 中でも、アザラシ科の中で最も大きいミナミゾウアザラシの剝製は、見上げるようなスケールが来場者を圧倒していた。元々は江の島水族館(神奈川県藤沢市、現・新江ノ島水族館)で飼育されていたオスの「大吉」だ。

 初回の大哺乳類展から毎回訪れてきたという工藤あかねさん(33)は「ミナミゾウアザラシがすごかった。子どもの時とは違う角度から見られて楽しい」と話した。

 進化の過程で多様な姿を獲得してきた哺乳類。それを体系立てて理解するために役立ったのが「わける」と「つなぐ」という考え方だ。研究者たちは動物の形や骨格、内臓、そしてDNAの塩基配列を比べることで、多様性の中に共通性を見つけ、ときに修正を繰り返しながら、それらの関係性を探ってきた。

 例えば、かつてハリネズミとテンレックは同じ分類群に含まれていた。しかし、科学の発展に伴ってDNA分析が可能になった結果、これらは異なる分類群へと引き離されたという。

 特別展を監修した国立科学博物館動物研究部の川田伸一郎さんはインタビュー動画(https://youtu.be/s8E2u2wSu4M別ウインドウで開きます)で「分類の根本的な面白さだったり、意義みたいなものがあるとしたら、それは我々の好奇心をみたすこと、それ以外の何ものでもないと思います」と語る。

見ごたえあった

 こうした展示は専門的な知識のある人たちの好奇心を刺激する内容ともなっている。

 循環器内科医の尾下寿彦さん(40)は普段から哺乳類や剝製に関心があるという。「大きさの全く異なる心臓でも、基本的な形は同じという点が興味深い。哺乳類には、水中や森への適応などでそれぞれ違いもあるが、根本的に人間と通じるものがあると感じる」と語った。

 コウモリの生態を調査した経験を持つ佐賀県の副島和則さん(73)は「コウモリとネズミの系統図がわかりやすく、見ごたえがあった」と話した。(中嶋周平、川西めいこ、中村有紀子)

大哺乳類展3について

 開館時間は9時から午後5時(最終入場は午後4時半)。毎週土曜と、4月28日~5月6日は午後7時まで延長(最終入場は午後6時半)。月曜と5月7日は休館(4月29日、5月6日、6月10日は開館)。

 一般・大学生は2100円、小・中・高校生600円ほか。問い合わせはハローダイヤル(050・5541・8600)。詳細は展覧会の公式サイト(https://mammals3.exhibit.jp/別ウインドウで開きます)。

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