トヨタ自動車系の大手部品メーカー・アイシンの子会社に勤務していた40代の男性従業員の自殺をめぐり、遺族が労災保険法に基づく遺族補償などの不支給処分を取り消すよう国に求めた訴訟の判決が26日、名古屋地裁であった。五十嵐章裕裁判長は、困難な業務を複数抱え、長時間労働が続いたことなどが男性の自殺の原因だとし、労災と認定。不支給処分を取り消した。
判決によると、男性は1993年、自動車部品の鋳造などを事業とする「アイシン高丘」(同県豊田市)に入社。2016年に一般的な工法よりも難しい工法による部品生産準備などを担うチームに配属され、17年12月に自殺した。遺族は豊田労働基準監督署に遺族補償などの支給を請求したが認められなかったため、23年に提訴した。
判決は、男性が自殺の約2カ月前から、それまで未経験の難しい業務を担当するようになり、負荷が重なっていたと指摘。また、チームの従業員は、労働時間を過少申告していたと認定し、男性も、時間外労働の規制内に抑えるため過少申告していたと推認されると判断した。
その上で男性の時間外労働は、自殺直前の11月は前月比約3倍の85時間超で、不慣れかつ困難な業務を複数抱えて土日も休めず連日の勤務を余儀なくされていた経緯などを踏まえ、業務に起因する強い心理的負荷を受けて自殺したと結論づけた。
アイシン高丘は「事実確認の最中のためコメントは差し控えさせていただく」、豊田労基署は「今後の対応については、判決の内容を精査した上で関係機関と協議をして決めていきたい」とした。