先住民族アイヌの人々が誇りを持って暮らせる社会を目指す「アイヌ施策推進法」の施行から6年。アイヌ文化の発信が進み、様々な作品を通じて豊かなアイヌ文化が注目を集める一方、アイヌの人々への差別は今も存在する。同法も掲げる「共生する社会」は、どうすれば実現するのか。
伝統衣装や古式舞踊、アイヌ文化の復興目指して
新千歳空港から列車で南へおよそ1時間。2日、JR白老駅(北海道白老町)に降り立ってしばらく歩くと、森の木々と湖に囲まれた建物群が目に入ってきた。アイヌ文化の復興と発展を目指す国立の「民族共生象徴空間(愛称・ウポポイ)」だ。
広々としたホールでは、紺や白の伝統衣装を身につけた女性たちが、手足を優雅に動かしながら、水鳥の踊りを舞った。
「イランカラテ(こんにちは)」。会場ではウポポイの開設5年を記念する式典が開かれ、運営するアイヌ民族文化財団の常本照樹理事長が「アイヌ文化に触れ、共生する社会の大切さに思いをいたしてくださるよう、全力を尽くす」とあいさつした。
アイヌ語で「(おおぜいで)歌うこと」を意味するウポポイ。2020年7月に一般公開が始まった。歴史・文化を伝えるアイヌ民族博物館、伝統舞踊などを見学できる民族共生公園、慰霊施設の主に三つで構成される。
ウポポイの大きな目的は、アイヌ文化の復興にある。
アイヌは北海道や千島列島、樺太などで暮らしてきた先住民族だ。「アイヌ」とはアイヌ語で「人間」を意味する。狩猟や採集などを生業とし、独自の文化を形成した。アイヌの人数は、北海道が把握している範囲で、道内に23年10月時点で5322世帯、1万1450人がいる。
アイヌ文化は、アイヌ語を始…