(5月31日、春季中国地区高校野球大会1回戦 岡山東商6―5英数学館)
試合終了のサイレンが鳴り響くと、涙が止まらなかった。
春の広島県大会で5試合を全て完投し、初優勝に貢献した英数学館のエース・藤本勇太投手(3年)。この日はベンチスタートで、三回途中からマウンドに上がった。
岡山東商に2点を先制され、なおも1死一、三塁のピンチ。打席には4番打者。適時打を許して2点を追加されたが、後続を三振と右飛に仕留め、切り抜けた。
英数学館に進学した理由の一つは、黒田元監督からもらった手紙だ。「勇太と野球がしたい」「(藤本投手の)いいところが出せる」。2枚にわたる文章に「ここでやったら成長できる」と心動かされた。入部当初は128キロだった球速は147キロに。夢を聞かれると、「プロにいくこと」と迷わず答えている。
四回以降、七回までは二塁を踏ませぬ安定した投球を見せた。だが、八回に暗転。制球が定まらず、相手中軸に3連続二塁打を浴び、2点を許した。
直前の七回裏の攻撃で、アウトカウントを間違え、左直で三塁を飛び出して併殺にされた。同点に追いつき、さらに1死二、三塁で勝ち越しを狙う場面だったが、自分のミスでふいにしてしまった。
試合後、黒田監督は藤本投手に「夏に向けて伸びしろが見えたね」と声を掛けた。藤本投手は「ミスを引きずってしまった。チームに流れをもってこられるよう、試合展開を考えながら投げたい」と、新たな課題を持ち帰った。