北京中心部に設置された監視カメラ=2025年3月7日、藤原伸雄撮影

 中国での駐在を終えて帰国直前に中国当局に拘束されたアステラス製薬の男性社員に実刑判決が下された。摘発は中国でビジネスに関わる駐在員らに不安を広げており、スパイ取り締まりの不透明さを改めて印象づける形となった。

 この日、判決を傍聴した金杉憲治駐中国大使によると、男性は法廷で終始、「淡々とした」様子だったという。金杉氏は「あらゆるレベルで早期釈放を強く求めてきたが、今回、有罪判決が出されたことは極めて遺憾だ」と述べた。

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 中国のスパイ罪の法定刑は3年~無期の拘禁刑とされる。男性に言い渡された3年6カ月は、過去に日本人が拘束された事案の中では比較的短期となった。

 日中関係ではこのところ、東京電力福島第一原発の処理水放出を受けて禁止した日本産水産物の輸入が再開されるなど、前向きな動きが続いていた。

 ただ、こうした流れが判決に影響したと見る向きは中国では少ない。中国メディア関係者は「今回の件で外務省の論理が優先されることは考えにくい」と解説する。習近平(シーチンピン)政権では「国家安全」が極めて重視され、スパイ事件を仕切る国家安全省の権限が強化されているためだ。外資の誘致を進めたい経済省庁や地方政府からは不満ものぞく。

3年6カ月は軽い? 識者の見方は

 東京財団政策研究所・柯隆(…

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