青森県にリンゴが植えられて来年で150周年。このほど、「青森りんご植栽150周年記念」と銘打ったクラフトビールが誕生した。規格外のため出荷できない県産リンゴを活用したもので、シナモンを加え、アップルパイのような香ばしい味わい。県内の土産物店などで、本数限定で販売が始まっている。
商品名「酔えるアップルパイ」を考案したのは、青森県五所川原市でリンゴ園を営む土岐彰寿(あきなが)さん(43)。リンゴの加工品の企画・販売を手がける「トキあっぷる社」の代表でもある土岐さんは一昨年、同市出身の太宰治の小説「津軽」に出てくるリンゴ酒の復活プロジェクトを主導するなど、様々なリンゴ飲料の企画や開発に携わってきた。
昨今の猛暑は県内のリンゴ農家にも打撃を与え、特に昨年は高温障害の影響で出荷できない果実を大量に抱える生産者が多く出た。
土岐さんは「寒い季節にもおいしく飲めるビールができたらいいな、と思っていたところへ、生産者仲間の多くが苦しむ事態が起きた。仲間たちがせっかく育てたリンゴを生かしたい思いが、商品の企画につながった」と振り返る。
醸造は、土岐さんの知人が勤務する東京都内の醸造会社が担った。県産の「ふじ」と「王林」を主原料に、シナモンを加えてビールにすると、アップルパイのような甘みや風味が生まれることがわかった。
「ビールの主な原料の麦芽と、パイ生地の主な原料の小麦はいわば親戚で、だから味わいも似てくるのでしょう。リンゴにもシナモンにも体を温める効果があるとされ、寒い季節にぴったりです」と土岐さん。「パーティーやクリスマス、年末年始の乾杯にも。明治8年(1875年)に先人たちが苗木3本を植えたところから始まり、様々な危機を乗り越えて150年続いた青森県のリンゴ栽培の歴史に思いをはせながら、味わっていただけたらうれしい」とも話す。
1本(330ミリリットル入り)税込み1265円。350本限定で、取扱店舗などは、トキあっぷる社のECサイト(https://shop.toki-apple.com/)で案内している。同サイトには、県のリンゴ栽培の歴史などが詳しくわかるページもある。