ろうそくに火をつけてみんなでキャンドルファイアを楽しんだ=2024年8月、高増哲也医師提供

 医療者が同行し、アレルギーがある子どもや若者が参加する夏のキャンプ。半世紀を超えて続く小学生向けの企画や、コロナ禍の後に6年ぶりに開く中学生から20代向けの自然体験で、7月半ばまで参加者を募っている。食べ物やアトピー、ぜんそくへの対応を学び、仲間たちとの楽しい体験を通じて自信をつけてもらうのが狙いだ。

 神奈川県三浦市の宿泊施設で小学生を対象に、8月22日から2泊3日の予定で開催される「アレルギー児サマーキャンプ」は今年で52回目。磯遊び、ミニ運動会、カレー作り、ろうそくを囲む夜のキャンドルファイア、スイカ割りなどがある。参加費は2万9千円だ。

 医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、歯科衛生士、教員や学生らがボランティアで同行する。食事は、アレルギーを起こす成分を含むものを避けてメニューを決め、対応しきれない人には個別に聞き取りなどをして確認する。自己管理のための学習時間もある。

 神奈川県立こども医療センターの小児アレルギー専門医、高増哲也・栄養サポートセンター長(61)によると、食物アレルギーは重症だと命に関わることもあり、子どもとその親は普段から注意を払い、自宅外での食事や野外活動が自由にできないこともある。

 「親元を離れて、キャンプの安心できる環境下で体験を重ね、自信や自己効力感のきっかけをつかむ子どもを見てきました。たった3日ですが自立へ踏み出す成長の機会になります」

 初回は1974年。「喘息(ぜんそく)児サマーキャンプ」として始まった。キャンプの「40周年記念誌」(2015年発行)によると、当時はぜんそくの薬や医療技術が今の水準になく、同医療センターには重症の子どもたちがあふれていた。発作を恐れ、体育の授業や水泳、運動会、遠足などへの参加を控えることが一般的だった。記念誌は子どもと親の依存が強かったことも記している。

 当初は3泊で企画され、その後も毎夏開かれるようになった。肺機能の増進に水泳が良いと注目され、海水浴や遠泳も採り入れられていた時期もある。

 同医療センターの主催で続いたが、現在は実行委員会の主催となっている。医療の進歩でぜんそく児は減り、アトピー性皮膚炎の子どもが増えた。近年は食物アレルギーが最多で、重複の子もいるという。コロナ禍で2年間はオンライン開催だったが、22年から三浦での宿泊が復活した。

 薬剤師の鳩山宏一さん(35)は、小学低学年から6年生まで参加し、学生時代からはスタッフとして同行する。幼少期はぜんそくの発作で何度も親が夜間救急へ連れて行ったという。

 「キャンプでは発作を気にせずに思い切り泳ぎ、体を動かせて自信につながった。ほかの子たちもいたので、吸入治療が日常なのは自分だけじゃないと知り、心の支えとなった」と振り返る。

 運営側になり、自分と同様、「恩を次の世代へつなぎたい」と大人になって戻ってくる人の多さを知った。「一人ひとりの熱意や積み重ねが、この活動を支えてきて50回を超えたのでしょう」

 高増医師は31年前の研修医時代から活動に関わる。「アナフィラキシーショックや発作だけでなく、熱中症や感染にも細心の注意が必要。準備は大変だが、この夏も、子どもたちの笑顔や成長する様子を見られるのが楽しみです」と話す。

 申し込みは7月14日が締め切り。8月9日午後に同センターの体育館で説明会がある。詳細は公式サイト(https://allergycamp.com/)から。

相模原では14歳~20代まで対象のキャンプも

 認定NPO法人「アトピッ子…

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