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遊覧船「ブルームーン」にラッピングされたホッキョクグマを描いた北村元希さん=2025年4月25日、北海道函館市末広町、野田一郎撮影
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 自閉スペクトラム症などの人たちのアート作品をラッピングした遊覧船「ブルームーン」が、北海道函館市の函館港で運航を始めた。多くの人の目に触れることで、障がいのあるアーティストにとって光となる。

 遊覧船は2階建てで定員300人、160トン。白地の船体に色とりどりの51作品がちりばめられている。小学生から50代までの16人が描いた。4月25日、作者や保護者、施設の関係者らを招待したクルージングがあった。

 右舷前方に配された鮮やかな黄色のホッキョクグマは函館市の北村元希(げんき)さん(22)の作品だ。

 気持ちを伝えるのが苦手だ。4歳頃から大好きな動物を描くように。「ペットを飼っていないので、描くことで喜びを得ているようです」と母の妙子さん(52)。父の勝範さん(59)は「障がいは不便ではあるけれど、不自由ではないというメッセージが伝わってほしい」と語る。

 車やミニカーを描いたのは七飯町の佐久間智之さん(29)。「自分の絵を見てもらうことが好き。だからラッピングは一番うれしい」

 函館市の相場大河さん(30)は、生き物や鈴なりのブドウを描いた。「船に乗る前に作品を見て、函館の風景を楽しんだ後にもう一度作品を見られる。自分1人の力だけでは作品はたまっていくだけなので、発表の機会をもらえるのはありがたい」と話した。

 レイアウトは、障がい者や難病の人にファッションを提案するデザイナーの鶴田能史(たかふみ)さんが担った。ラッピングには電飾と合わせて約1千万円を投じた。

 傘下に運航会社がある魚長食品(函館市)の佐々聖・財務部長によると、先代の船が昨シーズンで廃船となり、能登半島地震以降に使われなくなっていた石川県七尾市の遊覧船を購入した。

 「何か一つ大きな特徴がほしかった」と佐々さん。グループのすし店で自閉症啓発のアート展で購入した絵を飾ったり、店員のユニホームに鶴田さんが障がいのある子どもたちと共同で作るTシャツを採用したりしていることを思い出した。「作品はカラフルで独創的。観光に訪れた子どもたちが乗ってみたいと思える船になる」

 自閉症啓発のアート展を企画してきた函館市の映像コンサルタント、藤田道子さん(69)が昨年の出品作の中から作品を選んだ。すでに売れた作品は購入者に使用許諾を得た。

 今後、新たに作品を集めてラッピングを追加していく。貼り替えも検討する。藤田さんは「障がいのある人の中には依頼してもすぐに制作できない人もいるので、今から声をかけていく。将来、全国から作品を集めたい」と意気込む。

 ブルームーンでは観光スポットの函館山を一望できる。30分と60分の2コースがある。運航スケジュールはホームページ(https://www.hakodate-factory.com/bluemoon/別ウインドウで開きます)で。

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