九州最大の商業地、福岡・天神にそびえ立つビルの数々。そんなビルを擬人化した舞台で知られるのが劇団「ギンギラ太陽’s」だ。24日にはランドマークといえる複合施設「ワン・フクオカ・ビルディング(ワンビル)」が開業し、街では「100年に1度」とも言われる再開発が進む。刻々と変わりゆく街並みに、劇団を主宰する大塚ムネトさん(60)はいま何を思うのか。
――ビルなどを擬人化した演劇をつくったきっかけは。
福岡市では1989年ごろ、流通戦争と呼ばれる商業施設の熾烈(しれつ)な競争が勃発した。「イムズ」「ソラリアプラザ」などが次々と建ち、競争に敗れ撤退する事業者も。ダイナミックに動く天神の街に、これを芝居にすれば地元に根ざしたものがつくれる、と気づかされた。そして天神の中心で金色に輝くビルをキャラクターにした「イムズマン」が生まれた。
そこから、呉服屋の大旦那「岩田屋さん」、全国区になった銘菓「ひよこ侍」など次々と誕生。地元の人にしかわからない物語を創ってきた。
芝居を創るため、公演に来てくれたお客さんにアンケートした。商業施設の開発の話を聞かせてくれる人を募り、取材にでかけたことも。各施設には許可なしで始めたが、名が知れた経営者にもおもしろがってもらい、再来年には劇団の旗揚げから30年目を迎える。
――以前の天神はどんな街でしたか。
かつて、モノがたくさんあることで人は幸せを感じ、買い物に行くことが大きな意味を持った。天神のファッションビルやデパートで、大人はテレビCMで流れる新製品を眺め、子どもは世界の珍しい展示物が集まるイベントに興奮した。
僕は子どもの頃、「天神コア」の本屋で一日中立ち読みした。正月はお年玉の1万円を握りしめ、全額文庫本に換えていた。当時、福岡県小郡市に住んでおり、買い物でお金がなくなって帰れなくなるといけないので、行きがけに西鉄天神大牟田線の往復切符を買っていってね。みんなのワクワクが詰まった場所だ。
「僕はビルの悩みを知っていた」
――その天神がいま、変貌(…