Smiley face
カンヌ入りしたモハマド・ラスロフ監督
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 イランで8年の収監が決まっていたモハマド・ラスロフ監督が国を脱出し、5月にフランスで開かれた第77回カンヌ国際映画祭に姿を見せた。新作「聖なるイチジクの種」で特別賞を受けたラスロフ監督は朝日新聞の取材に「カンヌの地に立てたこと、観客に受け入れられたことに感謝する。この映画がイランの反政府運動に貢献出来れば」と答えた。

 ラスロフ監督は1972年生まれ。死刑制度をモチーフにした寓話(ぐうわ)的な「悪は存在せず」で2020年のベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞を受けた。この時は、反政府運動に加担したとして出国禁止処分を受けており、受賞会見には携帯電話で参加した。

 「聖なるイチジクの種」はテヘランの4人家族の物語だ。裁判所の判事に出世した男が、反政府運動に連帯を示す2人の娘との対立を深めていく。ラスロフ監督も出席した公式上映ではスタンディングオベーションが12分間続いた。「権力は国民のプライバシーをどう侵害し、どう洗脳していくかを描きたかった」とラスロフ監督は言う。

 22年、実際に起こった事件をモチーフにしている。髪を隠すためのヒジャブの着け方が不適切として、22歳の女性が警察に逮捕された3日後に急死。イラン国内を始め、世界各国で抗議が広がった。映画に登場する娘2人は、この事件に対する怒りを強め、権力側の父親と対立する。

 「私は現実に触発されて、こ…

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