イランの次期大統領に改革派のマスード・ペゼシュキアン氏(69)が決まった。経済制裁の緩和に向けて米欧と対話する姿勢を打ち出し、生活苦に悩む人々の不満を取り込んだ。現政権の反米保守強硬路線への批判の受け皿となり、無党派層を中心に支持を拡大したとみられる。
「制裁を解除するために1時間たりとも無駄にしないことを誓う」。ペゼシュキアン氏は2日、対立候補のジャリリ元最高安全保障委員会事務局長(58)との討論番組で、こう力を込めた。
イランでは米国などの制裁下で深刻な経済苦境が続く。制裁緩和に向けて米英などと結んだ核合意から米トランプ政権が離脱した2018年、1ドル当たりの自国通貨の相場は約4万リアルだった。今月5日現在では約61万リアル(いずれも実勢レート)となり、自国通貨の価値は15分の1に下がった。
これが輸入品の値上がりにつながり、国営通信によると、4~5月のインフレ率は37%。市民の間では食品や家賃の高騰に対する不満が渦巻く。
ペゼシュキアン氏を支持する高校教師の男性ケイバンさん(40)は「車もアパートも高くて買えず、これでは結婚もできない。同じ問題を抱えた同世代の友人は多い。ペゼシュキアン氏には制裁解除に向けた努力を期待する」と話す。制裁解除という明確な目標を示すことで、国内経済の立て直しを望む人々の支持を得ることに成功したとみられる。
また、ライシ政権下の22年…