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和歌山商業相撲部監督の門林三千生さん=2024年12月19日午後0時29分、和歌山市、伊藤秀樹撮影
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 門林三千生(みちお)さん(44)は、県立和歌山商業高校の相撲部監督として今夏、全国高校総体の相撲団体戦で同校を63年ぶりの頂点に導いた。「最高の形。選手を誇りに思う」。大分県宇佐市の会場で、部員に胴上げされた。

 団体戦は5人制。8月2日、予選を突破した32校による決勝トーナメントがあった。決勝は、予選で負けた鳥取城北と対戦。2人が負けて後がなくなったが、3人目から3連勝して優勝をつかんだ。

 県予選は箕島に敗れ、全国は「補欠」での出場だった。運が味方した。規定では、来年の開催地・鳥取県から参加校が補充される。だが、鳥取県から出場できる学校がなく、26年開催地の和歌山がその権利を得た。

 那智勝浦町出身。相撲は新宮高校に入ってから始めた。100キロに満たない軽量で、大きな相手に勝てなかった。「弱かった。自分に自信が持てなかった」

 学生相撲の強豪、東洋大に誘われ、スポーツ推薦で進学。強くなろうと希望に燃えて上京した。だが、相撲部から求められたのはマネジャーの役割。周囲は全国大会で実績を残してきた選手たちばかり。受け入れるしかなかった。

 毎日午後3時には大学から合宿所に戻り、5升(50合)炊き炊飯器をセット。近所のスーパーへ買い出しに行き、十数人の部員の料理をつくった。「トンカツは1回の食事で何枚揚げたか分からない。毎日『明日の夕食なに作ろうか』と考えていた」。練習したい気持ちを我慢し、部員を支えた。

 卒業後、教員の道へ。13年前、和歌山商業に赴任し、初めて相撲部の指導を任された。廃部寸前で部員1人からのスタートだった。

 和歌山市で開かれている相撲教室では小学生の指導にも当たる。小学生から高校生までの一貫指導の体制が整い、相撲部は盛り返した。この夏全国制覇したメンバーのほとんどが相撲教室の出身者だ。

 「相撲を通して、挑戦する気持ちやあきらめない心を子どもたちに育てていきたい」

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