OMCパワーの電気を使う理髪店。客のひげをそる手元を、電球が照らす=2024年4月、インド北部コタワン、伊藤弘毅撮影

 インド北部ウッタルプラデシュ(UP)州の州都ラクナウから、北西に車を走らせると、道ですれ違う乗り物が乗用車から自動二輪車、トラクター、そして自転車へと移り変わっていく。黄金色の麦畑。土壁の家の傍らで、鮮やかな民族衣装サリーを着た農民がウシを引いていた。

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 この日私は、ある地元発ベンチャー企業の営業現場を訪ねた。ラクナウを発って約2時間。コタワンという小さな集落に着くと、家々や店の壁に「OMCパワー」と書いた青いポスターやステッカーが貼られていた。主にUP州で、太陽光発電でつくった電気を家庭や事業者に売っている会社だ。

OMCパワーの電気を使うマニシャさんの自宅には、同社のポスターが掲示されていた=2024年4月、インド北部コタワン、伊藤弘毅撮影
「OMC」と書かれた電柱。OMCパワーは、家庭や個人の利用者向けに自前の電柱を立てている=2024年4月、インド北部コタワン、伊藤弘毅撮影

 世界銀行によれば、インドでは2022年時点で人口のほぼ100%が電力にアクセスできる。この集落にも多くの家や企業に電線が引かれ、電気は通っているが、地元の配電会社ではなく、OMC社から電気を買う人が増えているという。一体なぜ?

電気を買って減らせたものと、増えたもの

 通りに面した店でミシンを操…

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