インド太平洋地域を一体の「戦域」と捉え、日米が同志国とともに防衛協力を強化する「ワンシアター(一つの戦域)」構想。中谷元・防衛相が、3月末のヘグセス米国防長官との会談で打ち出した考えだ。日本側の狙いはどこにあるのか、自衛隊の関与はどうなる可能性があるのか。黒江哲郎・元防衛事務次官(現・三井住友海上火災保険顧問)に考えを聞いた。
- 中谷防衛相、米側に「一つの戦域」構想伝達 巻き込まれリスク指摘も
――ワンシアター構想を打ち出した狙いは何でしょうか。
軍事力を急拡大させる対中国シフトの一環だと言えるでしょう。日本を含むインド太平洋諸国は、1対1では中国を相手にできません。中国の一方的な現状変更の試みに対しては、日本や韓国、フィリピン、豪州などが多数派をつくり、一致して対応する必要があります。
もちろんインド太平洋地域の国々にとって、中国は重要な貿易相手国でもあります。それぞれの国が中国との関係を維持しつつ、自分勝手な行動には声を合わせてクギを刺す。そのような態度が必要だと思います。
――トランプ米大統領の再登板に伴い、安全保障面で不確実性が高まっています。
トランプ米政権が孤立主義的…