インドの首都ニューデリーの大統領官邸前。6月9日夜、約8千人の招待客が詰めかけるなか、ナレンドラ・モディ首相は「憲法と法律に従って正しい行いをすることを厳粛に誓う」などと述べ、3期目の首相として就任を宣誓した。
この国において、3期連続で首相を務めるのは、初代のネール元首相以来となる。モディ氏の人気は、それほどまでに高い。だが、モディ政権がこれまでと違い、不安定な政権運営を余儀なくされているのもまた事実だ。
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4日に開票されたインド総選挙で、モディ氏が率いる与党インド人民党(BJP)は議席を大幅に減らし、単独での過半数を維持できなかった。
一部で「圧勝」が予想された選挙で、なぜ与党は議席を減らしたのか?
私は今年に入り、北部ウッタルプラデシュ州を何度も回ってきた。住民たちの声に耳を傾け、その一端を探るためだ。
14億人超の国内人口のうち、この地域は州別で最多の2億人超が暮らす。世界遺産のタージマハルやガンジス川で有名なバラナシ、モスクの跡地にヒンドゥー教の寺院を建てたアヨディヤも州内にある。総選挙で選ばれる下院の543議席のうち、80議席が決まる重要州だ。
この地域を訪れたもう一つの理由は、インドを象徴するような格差や多様性が垣間見えると思ったからだ。
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