Smiley face

ソーシャルメディアはどこへ② 歌人、エッセイスト・上坂あゆ美さん 

 家族のことや自身の経験を赤裸々に詠んだ短歌がツイッター(現X)で話題を呼び、さまざまな発信もしてきた歌人でエッセイストの上坂あゆ美さん。ツイッターへの思いの強さと同時に、Xに変わる中で多様性や独自性などが「ぬるっと」失われる危機感を感じ、複雑な思いがあるといいます。SNSの変容をどうみて、向き合っているのか、聞きました。

 ――140字以内で投稿できるツイッターと基本は31字の短歌、通じるものがありそうです。

 2017年ごろに短歌をつくり始め、毎週、新聞歌壇に投稿し、載ったものをツイッターに投稿していました。当時はフォロワーがあまり多くなかったのですが、短歌や、身の回りのことを書いたツイートが徐々にバズるようになりました。

 短歌作品やエッセーを書くにあたって、自分の人生の話がしたいというモチベーションが今でも強いので、私はツイッターと相性がよかったと思います。ツイッターの投稿をきっかけに作品にすることもあったし、その時頭の中に浮かんだこと、心が動いたことをメモのように書ける場所がツイッターでした。

 SNSではどうしてもバズるとか、多くの関心を集めることがよしとされる風潮がありますよね。でも、インプレッション数(表示回数)を重視すればするほど、人間性が薄い、同じような内容があふれていってしまうと感じます。

 ――人間性が薄い内容の投稿とは。

 たとえば、「続きはプロフィールに」という締めの言葉や、「実は○○をするときに大事なこと。①…、②…」みたいな投稿が多くみられます。内容はさておき、どれも定型文じみていて、インプレッション数を重視するあまり個性が失われることはつまらないなと感じます。それよりはかつてのツイッターにあった、無意味な投稿も、深刻な投稿もみんなで共有できる空気感を愛していました。

 これは個人の感想ですが、かつてツイッター社は多様性を尊重してくれている気がしていたのに、今はその真逆をいっていると感じます。

 ――多様でなくなっていると感じるようになった契機は。

 イーロン・マスク氏がツイッター社を買収し、公式がインプレッション数に対してお金を払うことを表明してからはとくに顕著ですよね。いわゆる「インプレゾンビ」(閲覧数増による収益目的で迷惑投稿を行うアカウント)が湧き出したのもそこからで。それは個の人間性よりも数字を重視するという表明ですし、マスク氏のその他の思想も含め、Xから離れたクリエーターの人たちも多いですよね。こうした状況をみると、終わりも近いのではないかと感じます。

終わりまで見届けたい

 ――上坂さんはやめようと思いましたか。

 思いました。でも、そこでし…

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