2025年3月30日、ウィスコンシン州グリーンベイの集会で話すイーロン・マスク氏=AP

ニコラス・クリストフ

 これは、アメリカに移住して成功を収めた、アフリカ出身の才能あふれる2人の息子の物語である。1人の名前は聞いたことがあるだろう。イーロン・マスク氏だ。もう1人は、スーダン出身の「ロストボーイ」(スーダン内戦で家族を失った少年)、バレンチノ・アチャク・デン氏だ。大虐殺やライオン、ワニから生き延び、難民として(米南部)アトランタへ移住した。

 2人はその後、正反対の方向に進んだ。

 南アフリカ生まれのマスク氏は、ロケットや電気自動車、脳インプラント、衛星インターネットなどの分野で驚異的な成果を上げ、歴史に名を刻む偉大なテクノロジー起業家の一人となった。しかし、マスク氏は「西洋文明の根本的な弱点は共感だ」と警告しており、米国際開発局(USAID)を解体することで、彼が育った大陸の多くの貧しい子どもの生活を破壊しつつある。

 私の古い友人であるバレンチノ氏はその正反対だ。彼はトラウマによって、深い共感に満ちた人間になった。私はマスク氏の天才性を称賛するが、それがバレンチノ氏のような無私の精神によって和らげられていたらと願う。

 だから私は南スーダンの辺境にある町、アウェイルを訪れ、バレンチノ氏から学べることを探しに来た。もしかしたら、もしかしたらだが、マスク氏がこれを読み、人の真の価値は資産ではなく、人間性によって決まるのだと理解してくれるかもしれない。

もしアメリカに行かせてくれるなら……

 バレンチノ氏の壮絶な旅は…

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