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写真・図版
映像作家の山田あかねさんと愛犬のハル。ハルはもともと保護犬だった=太田匡彦撮影

 せめて私くらい、記録しなければ――。ロシアによるウクライナ侵攻が始まって2カ月が経とうとしていた2022年4月半ば、ポーランド経由でウクライナに入った。「戦争で動物たちの身の上に何が起きたのか、後世に残したい」。その一心だった。

 もともとテレビ制作会社の社員として社会に出た。転機は子どものように思っていた愛犬の死だった。いつか、犬のためになる映画を撮りたい。そう思うようになった。11年秋に渡英して動物保護施設でボランティアをし、帰国後、殺処分される寸前だった犬・ハルを飼った。

 15年にドキュメンタリードラマとして公開した映画「犬に名前をつける日」はその延長線上にある。東日本大震災の被災地に取り残された動物を保護する人々に取材した作品だ。以来、動物の命がテーマの映像作品や書籍を世に送り出してきた。

 人命が危険にさらされる局面で、報道の目は動物にまで届かない。そのことを嫌というほど知っている。だから22年、海外の知人らのSNSに「ウクライナの犬を救いに行く」などの投稿が目立ち始めると、いてもたってもいられなかった。

 初めての戦場取材はとまどうことばかり。思うようにならないことが多かった。新たな情報を得ても、実際の現場にたどり着くのが難しい。「悔しくて、3度ウクライナに行きました」

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