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ブリュッセルの北大西洋条約機構(NATO)本部で2025年2月12日に開かれたウクライナ支援を調整する会合で演説する米国のヘグセス国防長官=ロイター

 ロシアの侵攻を受けるウクライナをめぐり、ヘグセス米国防長官は12日、南部クリミア半島をロシアに一方的に併合された2014年以前の領土の状態に戻すことは「非現実的」で「幻想的」な目標だと発言した。ウクライナの領土奪還を支持してきたバイデン前政権からの大きな転換で、ロシアの違法行為を事実上容認することになりかねず、大きな波紋を呼びそうだ。

 トランプ米大統領は戦争の早期終結をめざし、ウクライナとロシアの停戦交渉の仲介に意欲を示してきた。1月の政権発足後初めて、具体的な停戦案の一端を示した形だが、ヘグセス氏はウクライナが求める北大西洋条約機構(NATO)加盟についても、「交渉による解決の現実的な帰結ではない」と否定した。

 ヘグセス氏は、ブリュッセルのNATO本部で開かれた、ウクライナ支援を調整する約50カ国の防衛相らが参加する会合の冒頭で発言した。米国として外交的な解決をめざすことを改めて強調し、「同盟国の力と、戦場の現実的な評価を組み合わせることによってのみ、戦争を終わらせ、永続的な平和を確立することができる」と主張。ロシアがクリミア半島を一方的に併合した14年以前の境界に戻す試みは「戦争を長引かせ、さらなる苦しみを引き起こすだけだ」と述べた。

 一方、ヘグセス氏は、ウクライナのNATO加盟は現実的ではないとしたうえで、代わりに「欧州および欧州以外の軍隊によって(ウクライナの安全が)担保されなければならない」とした。また、軍の配備はNATOの任務とせず、NATOの集団防衛の規定の適用対象とすべきではないと主張。米国が巻き込まれることを避けたもので、「いかなる安全保障の取り組みにおいても、ウクライナに米軍を配備することはない」と明言した。

 また、米国として、欧州より…

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