ロシアの初等中等教育11年生用の現代史教科書。QRコードを読み取ると、ウクライナ侵攻でメッセージを出すロシアのプーチン大統領の映像が流れる

連載「帝国の幻影~壊れゆく世界秩序~プーチン氏が描くロシア」【2】

 「スターリングラードの戦い」の章にあるQRコードにスマホをかざすと、重苦しい音楽とともに、がれきが燃え上がる戦場が映し出された。おびただしい数の遺体や、住民らの苦悩の表情のモノクロ映像に続いて、ナレーションが始まる。

 「これは偉大な戦いだった……」

 ロシアの初等中等教育10年生(高校生に相当)用の現代史教科書が扱う内容の一部だ。

  • 【第1回はこちら】「男なら軍隊へ」引き金ひく少年 プーチン政権下で加速する愛国教育

 1942年11月~43年2月、ソ連はロシア南部スターリングラード(現ボルゴグラード)でドイツ軍を撃退した。多大な犠牲を出したが、45年の連合軍勝利につながる転機となった。

 スマホに映し出されたのは、絶望的な状況を打開する前線の様子を、男女の兵士の愛を交えて描いた70年代の長編映画だ。

大統領補佐官が筆者の国定歴史教科書

 ロシアでは、ウクライナ侵攻翌年の2023年9月の新学期から、11年制の初等中等教育の最終2学年に国定教科書が導入された。各章の末尾にあるQRコードからは、関連した愛国映画や美術作品も観賞できる。

10年生用の現代史教科書。QRコードを読み取ると、第2次世界大戦中の写真や映像が流れた

 この教科書の主要な筆者は…

共有
Exit mobile version