国産ウクレレの大半を製造している前橋市の三ツ葉楽器が、県内高校生の音楽の授業用に、出荷できなかったウクレレを無償で貸し出す取り組みを続けている。
きっかけは、音楽の教科書を作っている教育芸術社(東京都豊島区)が2022年度の高校用の音楽教科書にウクレレを採り上げたこと。楽器や奏法について説明し、曲の楽譜も掲載している。
この教科書を使うことになった当時高校1年生の生徒が、大沢茂社長(74)が開いている前橋市内のウクレレサークルの生徒だった。その生徒から「学校でもやりたいのにウクレレがない」と聞き、県教育委員会に尋ねると「学校には通常ギターはあるがウクレレはない」と伝えられた。
「せっかく教科書に載っても、楽器がなければ何もできない」――。そんな思いから、県教委に「長年ウクレレを作ってきたが、不具合で出荷できなかったものが多くある。お貸ししましょうか」と提案し、22年度から希望する学校に貸し出すことになった。
不具合といっても、塗装が一部はがれたり少し傷がついたりしているだけで、音には影響がない。アウトレットで販売することも可能だったが、「せっかく職人が作ったもの」(大沢社長)なので、長年売らずに保管していたという。
これまでに貸し出したのは高崎東高、桐生清桜高など10校。各学校に40台ずつ、数カ月から半年間ぐらい貸し出し、授業が終わったら返してもらっている。
大沢社長は「長年ウクレレを作ってきて、学校教育でウクレレを使ってもらうのは夢だった。群馬でウクレレが作られていることやウクレレの楽しさ、音楽の楽しさを知ってほしい」と話している。
同社の創業は1948年。55年からウクレレの生産を始めた。今はウクレレと家具を主に作っている。大沢社長によると、日本で販売されているウクレレは海外メーカーのものが多く、国産ウクレレを量産している会社はわずかという。三ツ葉楽器は国産のトップブランドのOEM(相手先ブランドによる生産)として作っているほか、自社ブランドも手がけている。(大塚晶)