新型コロナウイルス感染拡大のなかで、高齢者や障害者の介護を担う職員は命をつなぐ不可欠な仕事、エッセンシャルワーカーであることが鮮明になった。
一方で、コロナ禍の前から極度の人材不足、ホームヘルパーの高齢化に直面していた訪問介護は、とりわけ危機的な状況に陥った。
NPO法人暮らしネット・えん(埼玉県新座市)は、訪問介護やグループホームなどの事業を地域で長年営んできた。代表理事の小島美里さんは、厚生労働省の当時の対応に、今も悔しさ、怒りが消えないと振り返る。
ケアワークはなぜ正当に評価されないのか。いまも続く課題をコロナ禍が浮き彫りにした。
NPO法人暮らしネット・えん代表理事 小島美里さん
――緊急事態宣言が出された当時、ケアワーカーのみなさんはどのような思いで働いていたのでしょうか。
大げさではなく震えながら仕事をしていました。未知のウイルスで感染したら死に直結するという情報も流れていました。利用者に感染させたくない、自分も感染したくない。猛烈な緊張感と不安がありました。
それでもホームヘルパーたちが訪問する利用者の大半は、一人暮らしや、介護家族も高齢の老老介護の世帯です。基礎疾患のある超高齢者や末期がんの患者さんもいます。そういう人たちを放っておくわけにはいかない、訪問介護は休めないという信念はみなもっていました。
――2020年4月の時点で、訪問系サービスの関係者とともに、安倍晋三首相(当時)に要望書を出しています。
デイサービス(通所介護)などが相次いで休業となるなか、その代替手段として訪問介護はサービス継続を要請されていました。感染防止策を徹底して訪問を、というのです。
そんなことを言われても、人手不足でいまの利用者さんだけで精いっぱい。感染症の専門知識はなく、マスクも消毒用アルコールもなくなりかけていました。こんな状況で代替の分までヘルパーが行ってケアせよと言うのか、と思いました。
職業的な倫理として訪問は続けるけれども、そのために入手困難な必要物品を支給してほしい、ヘルパーの緊急増員も必要だと訴えました。
「入浴介助ほどつらいものはない」
――当時、介護現場においては感染予防も非常に難しいのだと取材で何度も聞きました。
教科書通りにはいかないので…