奈良県大和高田市立片塩中学校の吹奏楽部員や同部卒業生ら30人が29日、和歌山県串本町沖で遭難したオスマントルコの軍艦エルトゥールル号の慰霊碑(串本町樫野)を訪れ、楽曲「エルトゥールル号の記憶~太陽と新月の絆~」などを演奏した。
日本を親善訪問し、帰国の途に就いたエルトゥールル号は1890年9月16日、串本町の紀伊大島樫野埼沖を航行中、台風に遭遇。岩礁に激突して船体が破損し、流入した海水が機関爆発を引き起こして587人が亡くなった。
この事故で、当時の紀伊大島の島民は不眠不休で捜索にあたり69人を救助。殉難者の遺体の引きあげにも尽力した。また、日本全国から多くの義援金や物資が寄せられたという。
楽曲「エルトゥールル号の記憶」は、遭難や救助活動の状況、その後の友好関係を、「メフテル」という勇壮な行進曲の旋律も取り入れて表現。最少18人の小編成でも演奏可能な吹奏楽の曲だ。
片塩中吹奏楽部顧問の阪田剛一教諭は、社会科を教えている。歴史の教科書には、エルトゥールル号の遭難だけでなく、イラン・イラク戦争が激化した1985年3月にトルコ国民が陸路で避難する中、脱出を希望した日本人215人をトルコ側が自国の航空機で助けた「恩返し」の物語が収められているという。
昨年7月、阪田教諭はこの曲を2025年度の全日本吹奏楽コンクールの自由曲に選び、部員たちと練習を重ねてきた。日ト友好の絆となった遭難と脱出の物語を描いた日本映画「海難1890」も2回視聴し、イメージを膨らませてきた。
阪田教諭は「この場所で演奏できるのは特別なこと。大変素敵な機会をいただいた。心を込めて演奏しましょう」と呼びかけタクトを振った。
演奏会には、たまたま訪れていたトルコからのツアー客も足を止めて聴き入り、国家が演奏されると涙ぐむ人もいた。
演奏後、ホルン担当の川本星愛(せいあ)部長(新3年)は「貴重な体験でした。現場を見ることで曲をより深く考えられるようになります」と話した。