(22日、第107回全国高校野球選手権群馬大会準々決勝 桐生第一2―6高崎)

 5点差で迎えた六回表無死一、三塁、桐生第一のエース斎川航大(3年)がマウンドを託された。「ピンチの時こそ巻き返すチャンス。チームに流れを持ってくるんだ」。マウンド上で明るい笑顔を見せた。内野ゴロの間に1点取られたもののピンチは切り抜けた。

 桐生第一は1999年の第81回全国高校野球選手権大会で全国制覇を果たした経験があり、今春の関東大会ではベスト8。今夏も優勝候補の一角とされた。部員は健大高崎に次ぐ102人だ。

 「下克上からの日本一」をチームスローガンに掲げていた。昨夏の群馬大会3回戦で健大高崎に延長十一回タイブレークの末5―6で敗退。昨秋の県大会では2回戦で健大高崎に2―14(5回コールド)で、今春の県大会決勝は0―12で敗れた。

 「何かを180度変えるくらい、変化をもたらさなきゃダメだ」。就任7年目の今泉壮介監督(45)は呼び掛けた。それまでの桐生第一は、筋力トレーニングを重視したパワーで勝負する野球だったが、「投手を中心とした堅い守りで勝つ野球」に転換し、打撃は単打でつなぐことを意識した。

 守りの中心として成長したのが斎川だ。昨秋の県大会は背番号18で登板は打者1人のみ。背番号1は松田陸人(3年)が担っていた。松田が肩のけがからなかなか本調子を取り戻せない中、フォームを改善し、重心移動やグラブ、足の使い方などの基礎を一から見つめ直した。春の県大会から背番号1を背負い、チームを県大会準優勝、関東大会8強に導いた。

 「秋の時点では自分がエースになれるなんて思っていなかった」という斎川。迎えた群馬大会では、初戦となる富岡との2回戦で先発し3回無失点、高崎商大付との3回戦では1失点完投。

 「エースとして背番号1をもらったからには、ベンチ外の仲間も含む102人の思いを背負って投げたい」

 この日の高崎との準々決勝では、持ち味の制球力を生かして、直球や右打者の内角を突くスライダーで打ち取り、八、九回は三者凡退に抑えた。だが、九回裏2死で打席に立った斎川が遊飛となり、試合は終わった。

 試合後、「エースとしてみんなを勝たせたかった」と涙を流した。「野手がバックにいると信じて投げられた。仲間に感謝です」

高崎21年ぶり、健大高崎6年連続のベスト4

 第107回全国高校野球選手権群馬大会(朝日新聞社、群馬県高校野球連盟主催)は22日、上毛新聞敷島球場で準々決勝2試合があった。北毛地区から初の甲子園出場をめざした利根商は、春の関東大会王者の健大高崎に0―10(6回コールド)で敗れた。ノーシードから快進撃を続けている高崎は、17年ぶりの夏の甲子園出場をめざした桐生第一を6―2で破った。健大高崎は6年連続、高崎は21年ぶりの準決勝進出。23日は東農大二―前橋商、前橋育英―桐生市商の準々決勝2試合が予定されている。

健大高崎の猛打爆発、5回10得点

 ◎…2本塁打を含む11安打10得点を奪った健大高崎が、利根商を圧倒した。

 健大高崎は二回、1死満塁から押し出し四球、山田の右前安打、加藤の左越え二塁打で4点を先制。四回にも加藤の右前安打で加点、五回には1死一塁から杉山の左越えランニング本塁打が飛び出した。六回には石田の右越え本塁打、杉山の中前安打で3点を奪い、突き放した。

 利根商は五回、1死一、三塁の好機をつくったが、後続が併殺に倒れるなど、波に乗ることができなかった。

勢い乗る高崎、桐生第一に快勝

 ◎…勢いに乗る高崎が、強豪私学の桐生第一に快勝した。

 高崎は四回、1死満塁から関島が3点適時二塁打、続く2死二塁から谷口が中前安打を放ち4点を先取、試合を優位に進めた。六回には無死二塁から塩谷の三塁打で加点。さらに一、三塁とし、大畠の二ゴロの間に塩谷が本塁を突き6点目を奪った。エース黒田は7被安打2失点に抑え完投した。

 桐生第一は六回1死三塁から伊欲が、七回2死一、三塁から小松がそれぞれ適時打を放ったが、持ち前の強力打線がつながらなかった。

共有
Exit mobile version