(17日、第107回全国高校野球選手権大会3回戦 明豊1―3県岐阜商)
2点リードされて迎えた七回裏、2死一、二塁のピンチ。絶対に失点したくない場面だが、明豊のエース寺本悠真投手(3年)はいつも通り、表情を変えず、冷静に打者と向き合った。
2024年春の選抜大会と昨夏も甲子園のマウンドに立った。大舞台を経験して自信と安定感を身につけ、今年は背番号1。チームには好投手がそろうが、川崎絢平監督は大事な試合、苦しい場面で登板させてきた。信頼の証しだ。
この日も先発を任されたが、「8強入りを意識して力が入ってしまった」。安打と四死球で満塁のピンチを招くと、甘く入った球を狙われ、3点を失った。
だが、そこから本領を発揮した。「二回からはコントロールを意識した」。得意の変化球でコーナーをつき、調子を取り戻した。
七回のピンチも辻田拓未捕手(3年)のサインを信じ、腕を振った。低めに変化球を落とし、空振り三振を奪った。フーッと息を吐いてベンチに戻り、仲間とハイタッチした。
味方の好守にも支えられ、二回以降は無失点。「強い精神力を持った、誇れる『1番』に成長した」と川崎監督がたたえる力投だった。
敗戦が決まり、グラウンドで涙をぬぐったが、試合後の取材には「やりきったんで、涙はあまり出ませんでした」。エースとしての自覚で、成長できた、と感じている。大学で野球を続ける。