早朝に目を覚まし、テントから出てきた移民ら=2024年4月30日、パリ、柴田悠貴撮影

 五輪開幕が迫るパリとその周辺で、警察が路上生活をする移民らの「排除」を進めている。当局は五輪とは無関係の取り締まりだとしているが、支援団体からは五輪を前に社会的に困窮する人たちの存在を隠すための「浄化だ」との批判が強まっている。

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 開幕直前に聖火ランナーが走るコース近くを流れるパリ北部のサンドニ運河。移民が多く集まるこの地区に17日早朝、約20人の警察官が現れた。「早く出てきてください」。運河沿いのテントの中で眠る人たちに次々と声をかけていく。強制的な立ち退きだ。

 地元行政当局によると、この日、サンドニ運河の護岸で立ち退きの対象になった路上生活者は100人を超えた。希望者はパリ近郊の宿泊施設に身を寄せることができるが、記者が確認した限り、用意された大型バス3台のうち2台はがらがらだった。

 こうした人々の大半は、滞在許可を持たないアフリカや中東からの移民たちだ。テントで暮らしながら難民申請の結果を待つ人やパリ中心部の工事現場などに働きに出ている人も少なくない。パリから離れると生活が立ちゆかなくなるため、立ち退きを求められた後、多くはパリやその周辺で再び眠れる場所を探す。

路上で暮らす移民たちがパリを離れられない理由

 この日、テントから退去させ…

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