志津川湾のカキ養殖=2016年、宮城県南三陸町、福留庸友撮影

 カキの養殖イカダに付着した海藻類が多様な生き物のすみかとなる上、二酸化炭素(CO2)を吸収して貯留し、地球温暖化を抑制する効果を生む――。宮城県南三陸町・志津川湾の漁業者らの取り組みが評価され、排出権として取引される「Jブルークレジット」の認証を受けた。CO2吸収量4・5トン分のクレジットを売り出し、引き合いも来ているという。

 県漁協志津川支所や町などがつくる「志津川湾ブルーカーボン協議会」のプロジェクト。ブルーカーボンとは、海藻などの海洋生物が光合成でCO2を取り込み、その後に深海などで蓄積される炭素を指す。

 志津川湾のカキ養殖は、水面に沿って延ばした幹ロープに、カキをつるしたロープを下げる方式。計測したところ、計638台の養殖イカダに約400トンの海藻が生育していた。ロープ上の海藻は、巻き貝や二枚貝、ゴカイ類など55種以上の無脊椎(せきつい)動物のすみかになっていた。

 Jブルークレジットを運営する国の認可機関「ジャパンブルーエコノミー技術研究組合」が、こうした調査活動を含めて評価。認証は県内では初となる。2月19日までクレジット購入の意向表明を受け付け、1口11万円で口数は無制限。

 南三陸町では東日本大震災後、自然と共生するまちづくりを掲げてきた。志津川湾では、持続可能なカキ養殖をめざし、過密だったイカダの台数を3分の1に減らした。2016年には、環境や地域社会に配慮した養殖業者の国際認証「ASC認証」を、日本で初めて取得。貴重な海藻藻場があるとして、18年にはラムサール条約湿地に登録された。

 他方、海洋温暖化の影響で主力魚種のシロザケが不漁となるなど、不安材料も加わっている。

 佐藤仁町長は「クレジットを売った収益は環境保全活動などにあてたい」としている。

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