天皇陛下をはじめ、皇族方の活動や皇室に関連する出来事を過去にさかのぼって紹介する「皇室365」を始めました。皇室のあり方が問われる中、公務や宮中行事などのトピックを毎週、担当記者が詳しく読み解きます。
7月9日(2009年) 美智子さまが子守歌を披露
2009年のこの日、カナダを公式訪問中だった天皇、皇后両陛下(当時)はトロント中心部の小児病院を訪れた。ここで、美智子さまが子どもたちを前に子守歌「ゆりかごのうた」を歌う場面があった。公の場で歌声を披露するのは珍しく、美智子さまからのサプライズの贈り物だった。
病院の読書室には、10人の子どもたちが集まっていた。「私は美智子です。日本から参りました」。笑顔で語りかけ、こう続けた。
「日本を発つ前から、このたびうかがうこの読書室で、私も何か皆様にお話を読んで差し上げられないだろうか、とお勧めをいただいておりました。限られた時間内で読める短いお話を探すことができず、かわりに小さな日本の歌、『ゆりかご』を歌うことにいたします」
読書室ではこれまでも、訪問者による読み聞かせが行われてきた。美智子さまは3人のお子さま方によく子守歌を歌ったといい、ゆりかごのうたもレパートリーの一つだったという。「歌手のようによい声で歌うことはできませんが」とユーモアを交えて前置きしたうえで、「ゆりかごのうたを」と歌い始めた。
1番、2番、4番を歌い、最後に英語で「どうか今夜ぐっすりとお眠りになりますように。陛下とともに、皆様のお幸せを祈っております」と伝え、ほほえんだ。
心温まる光景だっただけに、宮内庁も多くの人に伝えたかったのだろう。ホームページの「カナダ・アメリカ合衆国ご訪問時のおことば」の欄で紹介されている。
こうした美智子さまの姿勢について、記者は今は亡き側近からこう聞かされたことがある。「日本だけでなく、世界各国の子どもたちの幸せを願い続けたのが美智子さまだ」。話を聞いた当時は少し大げさに感じたが、美智子さまの歩みを改めて振り返ってみると、決して過剰な評価ではないと納得する。
2007年5月、両陛下の英…