カリブ海に浮かぶ、ある小さな島。これまではその美しさが観光客を引きつけてきたが、今はその地名が「金のなる木」になっている。
島は米フロリダ州マイアミから南東に約2千キロ。伊豆大島とほぼ同じ面積の約90平方キロメートルに1.5万人が住む。
飛行機からは、島を囲む透明な海と真っ白な砂浜が見えた。「カリブ海で最も美しい海」と呼ばれるだけのことはある。気温は年間を通して30度ほど。海岸沿いには「ベルモンド」や「フォーシーズンズ」など、欧米の富裕層を主な顧客とする五つ星ホテルが林立し、浜辺は大勢の観光客でにぎわう。
カリブ海でも有数のリゾート地だが、観光業に依存する体質から、観光客が激減したコロナ禍のため島の財源は枯渇していた。それが突然、名前のおかげで歳入が急増。住民向けに医療費の一部無料化まで打ち出した。政府のウェブスター首相は言う。
「まるで神からの贈り物です。『アンギラ』(Anguilla)という地名をつけてくれた祖先に感謝しないと」
「金のなる木」は、アンギラ…